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最悪の条件(1999/2/11)
2月11日は過去5年間で最悪の条件になった。朝から雨が降っていた。寒いのは諦めているし、雨なら何とかなる。といつも通り昼から多摩川に向かった。水温は9度だが気温よりかなり暖かく、水に手を入れても冷たさはあまり感じないが、雨で濡れた手は冷たい北風のせいでかじかんでいて、ラインをたぐるのもままならない。それでも3時頃まで鯉のライズを待ちながら波立つ水面をひたすら眺めていた。冷たい雨で表面の水温が下がったためか北風で水面が波立っているせいか、全くライズしない。そのうち、落ちてくる雨の速度が遅くなり大きくはっきり見えるようになった。なんと雪に変わったのだ。少しづつ白くなっていく川原に人影はない。水面に消える雪を眺めながらフライの行方を追っていた。しかし、ライズはない。そのうち足元を枯れ葉が筋になって流れていくのに気付いた。どこかの吹き溜まりから雨で流れ出したのだなと思いながら無意識に流れの先を追っていた。すると少し下流の岸の小さなくぼみで、枯れ葉が円を描きながらゆっくり回っている。その中に鯉の口が見えた。そこは波がなく鯉の口が枯れ葉を追っている。「いた!」声に出して叫び、すぐ枯れ葉の中にフライをキャストした。[バシャ!]鯉が反転した。[ヤッタ!?]釣れたのでなく逃げられた。焦った時によくやるやつで、安心して餌を食っていた鯉をフライで脅してしまった。呆然と波紋を眺めながら、雪の中、体中の力が抜け両腕をダラッと垂らしたまましばらく動けなかった。この条件下で他のポイントを探しても鯉が出てくる保証は全くない。そのまま鯉が再び枯れ葉を食いに出てくるまで待つことにする。
カッパに雪があたる音を聞きながら両腕を垂らしたまま水面を眺めていた。
どのくらい時間が経ったのかはっきり判らないが20分位待ったと思う。
「出た出た!」やっと帰ってきた。
今度は、上流から流れに乗せてポイントにフライを送り込む。しかし小さな渦の中にフライを上手く流し込むには、筋を上手く読まないと難しい。フライが渦の横を通り過ぎると、鯉を脅さないように静かにラインを引き、流す筋を変えてやり直す。やっと渦の中に入った。鯉は相変わらず枯れ葉を食っている。その鯉のすぐ横にフライがたどり着いた。
「さあ、食え!」叫ぶがなかなかフライに気がつかない。枯れ葉に夢中になっている。と、突然横から別の鯉がモコッと頭を出してフライを吸い込んだ。合わせた瞬間そこにいた全ての鯉が水しぶきをあげて反転した。5−6尾は居た。「ヤッタ!」今度はラインの先に鯉が付いている。やっと取り込み撮影を終わってリリースしたがポイントに鯉の姿はもうない。
川原一面が白くなる。このまま雪が降り続いたら、帰り道バイクが滑り恐いので早上がりとする。釣果は1尾だが貴重な1尾になった。
水温が下がっても水面に餌さえあれば鯉は浮いてくるが、波が高い所は餌が波に乗って水面を上下するのでイヤがるのだろうか、出が悪い。
風が強い時は、出来るだけ波のない水面を探すのがいいようだ。


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